大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和37(オ)272 判決

主 文

上告人らの各上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理 由

上告人A1の訴訟代理人秋草愛一、同石井成一、同御正安雄の上告理由(以下甲

と略称)第一点の(一)及び上告人A2の訴訟代理人武藤正敏の上告理由(以下乙

と略称)第一点について。

原判決は、昭和三〇年六月本件物件の売買契約が上告人A1と上告人A2との間

に成立した直後に右A2と被上告会社との間で代物弁済が成立した、と判示してい

ない。原判決は、上告人A2が被上告会社との間の取引より生じる債務につき本件

物件を担保に供するからこれに抵当権を設定するなり代物弁済とするなり被上告会

社の選択に委す旨申し入れたので被上告会社もこれを諒としたことを判示している

に過ぎない。従つて、右の時点に代物弁済契約があつたと原判決が認定判断したこ

とを前提とする所論は、すでに前提を欠き採るに足らない。又、その余の論旨もす

べて、原審の専権たる証拠の取捨判断、事実の認定を非難するに尽き採用できない。

甲第一点の(二)及び乙第二点について。

所論指摘の点の原判示の趣旨は、上告人A1と上告人A2との間に本件物件の売

買契約が成立した直後に上告人A2と被上告会社との間に代物弁済が成立したとは

判示していないこと、前述のとおりであつて、その時点においては右売買契約の約

旨上未だ本件物件の所有権を取得していない上告人A2が、その所有権取得を停止

条件とする代物弁済の予約を申し込み、債権者たる被上告会社がこれを諒として、

ここに被上告会社に予約完結権を留保する右予約が成立したことを認定判示してい

るものと解すべく、また、昭和三二年四月六日被上告会社が上告人A2に対してな

した通告とは、右予約完結権の行使の意思表示を判示するものと解せられ、これに

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よつて成立する本契約は上告人A2が本件物件の所有権を取得することを停止条件

とする代物弁済契約であると判示しているものと解することが相当である。

従つて、右と異る原判文の理解を前提として原判決の理由不備、理由そごないし

審理不尽をいう所論は、すべて採用できない。

甲第二点及び乙第三点について。

論旨は、挙示の点につき原審の採証法則違反、経験則違反をいうが、すべて原審

の専権たる証拠の取捨判断、事実の認定を非難するに帰着し採用できず、右を前提

として原判決の誤りをいうその余の論旨も採用の限りでない。

甲第三点及び乙第四点について。

論旨は、上告人A1が上告人A2に対して昭和三二年一月二五日書面を以てなし

た所論催告ならびに停止条件付売買契約解除の意思表示の無効を判断した点に原判

決の経験則違反、法令適用の誤り、理由不備、審理不尽をいうが、右所論指摘の点

についての原審の認定判断は首肯できるものであり、その間に所論違法は存しない。

所論(一)は、原審の認定にそわないことを前提とし、或いは事案に適切でない

判例を挙示して、原判決の正当な判断を非難するに過ぎないものですべて採用でき

ない。

所論(二)は、独自の見解に基づいて原判決の所論認定判断の経験則違反、理由

不備、審理不尽をいうものであつて採用できない。

甲第四点及び乙第五点について。

所論売買代金の支払方法についての約定が昭和三〇年六月中に改められ、同月以

後毎月八〇、〇〇〇円宛の月賦支払の約とされたことについて当事者間に争ない旨

を原判決が判示している点には、何ら違法はない。しかして、原判決は、右のよう

に代金支払方法が改められた事情及び右割賦金の充当についてまで、当事者間に争

いない事実として確定判示してはいない。判文上明瞭なように、原判決は、上告人

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A2から上告人A1に対し、昭和三〇年六月から同三元年二月まで毎月金八〇、〇

〇〇円宛(計七二〇、〇〇〇円)、昭和三一年九、一〇、一一月に毎月金三〇、〇

〇〇円宛(計九〇、〇〇〇円)、以上合計金八一〇、〇〇〇円が支払われ、これが

すべて本件売買代金の割賦金の弁済として支払われたものであることを挙示の諸証

拠によつて認定判示しているのである。

所論は、ひつきよう、原判文を正解しないことに基づくものであつて、採用の限

りでない。

甲第五点及び乙第六点について。

所論は、原判決が被上告会社の所論弁済供託を有効と判示した点に民法四七四条

一項但書の規定の解釈適用の誤りがあり、理由不備、審理不尽の違法があるという。

すなわち、被上告会社の弁済は、第三者たる上告人A2のためのものであるところ、

売主たる上告人A1と買主たる上告人A2とは共に本件売買契約の解除を主張して

来たものであるから、第三者弁済につき当事者が反対の意思を表明している場合に

あたり民法四七四条一項但書の適用上、被上告会社の所論弁済供託は、弁済の効力

を生じ得ないというのである。

しかし、第三者の弁済につき当事者が反対の意思を表示したかどうかの主張立証

の責任は、その表示ありとして第三者弁済の無効を主張する者の側に存するものと

いうべきところ、本件において、その主張立証は原判文ならびに記録上認められな

い。又、被上告会社の上告人A1に対する所論代金の弁済供託以前に、上告人A2

の代金債務不履行を原因とする所論売買契約解除の主張が上告人らによつて第一審

以来なされていたことは、記録ならびに原判文上窺えるけれども、かかる主張は、

契約解除により債務が消滅したという主張にとどまり、本件債務に対する第三者弁

済について上告人らが反対の意思を表示したとの主張とは認め難い。所論は、ひつ

きよう原審において主張なく従つて認定判断を経ない事項を以て原判決の判断遺脱、

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理由不備をいうものであつて、上告理由として採用できない。

甲第六点及び乙第七点について。

被上告人の弁済供託の主張に対し、上告人らが原審第一五回口頭弁論期日におい

て、所論昭和三六年七月一八日附準備書面の三項に基づき時期に遅れた攻撃方法と

して異議を申し立てる旨陣述していることが記録上認められるが、同口頭弁論期日

において上告人らは右異議を述べる以前に被上告人の所論弁済供託の事実を認めて

いることが同期日の調書(記録二七〇丁)上認められ、もはやこれに対する答弁や

立証のために訴訟の完結を遅延させるおそれのないことが明らかにされているから、

原審が被上告人の右弁済供託の主張に対し民訴法一三九条を適用してこれを却下し

なかつたことに違法はないものというべく、原判決中にこれについての判断が示さ

れてないことは、判決に影響を及ぼすこと明らかな法令違背を来すことにならず、

判決の理由不備をも生じない。よつて、所論は採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、

主文のとおり判決する。

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 奥 野 健 一

裁判官 山 田 作 之 助

裁判官 草 鹿 浅 之 介

裁判官 城 戸 芳 彦

裁判官 石 田 和 外

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